Where are you from? は誤り?

A: Hi, I’m Kechu. Nice to meet you.
B: Hello, I’m Anna. Nice to meet you too.
A: Where are you from, Anna?
B: I’m from Canada. How about you?

このような会話は自然で英語の初学者の方がよく目にするものかと思います。ただある日私はふと思いました。「Where are you from?」って文法的に間違ってない?と。いやいや、ネイティブ含めてみんな使ってるし間違ってるわけじゃないないでしょ!と思う方がほとんどでしょう。私ももちろんそう思うのですが、文法的にこれが成立する理由が説明できなかったんです。

具体的に言うと疑問副詞であるwhereがどうしてfromと合わせて使えるのか?ということです。とは言えそれなりに難しい話で、そう言われてもよく分からないという方もいるかと思いますので、今回は疑問とその答えを少し詳しく解説してみようと思います。

また、今回の記事を書くにあたり渡辺雄太先生(X → @Koshi_NN)から多くのアイディアをご提供いただきました。渡辺先生の文法書は英文法に語源からアプローチするもので自分も楽しく読んでおりますのでここでご紹介させてください。

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渡辺雄太 (著)

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疑問文の作り方

初歩的なところですが、疑問文では尋ねたいものを疑問詞に置き換えるところから始まります。

例えば相手に、

I like apples.

と答えて欲しい場合(相手の好きなものが知りたい場合)は、apples → whatに置き換えて、

What do you like?

となる訳です。(実際はWhat do you like? だけでは範囲が広すぎるので What fruit do you like? などのように少し限定して聞くことがほとんどかと思います。)

この理屈で言うと、相手の出身地が聞きたい場合は

I’m from the US.

というように答えて欲しいので、the US → where と置き換えて、

Where are you from?

になるとも言えそうではありますが、このプロセスに納得が行きませんでした。だって where は疑問副詞でしょ?と考えたわけです。

疑問代名詞と疑問副詞

TOEICや英検を学習している方でもこの2つの単語はあまり聞いたことが無いという方もいるかと思います。簡単に言うと、what や which などの疑問代名詞は名詞を置き換える一方で、when や where などの疑問副詞は副詞を置き換えることになります。先ほどの例で言うと、I like apples. という文章の名詞 apples を what で置き換えていることになります。

それでは以下の例を見てみましょう。

What country do you want to go?

この文章は「あなたはどの国に行きたいですか?」という意味で普通に会話では伝わると思うのですが、文法的に言うと間違いです。これを肯定文の形に戻してみましょう。

I want to go to the US.

先ほどの文章では to the US の部分を what で置き換えてしまっていることになりますが、to the US は名詞句ではなく副詞句なので疑問代名詞 what で置き換えることはできません(前置詞+名詞のかたまりは基本的に副詞句または形容詞句として働くというのは重要なルールですね。)。疑問代名詞である what は名詞である the US しか置き換えられない一方で、疑問副詞である where は副詞句である to the US を置き換えられます。つまり、

What country do you want to go to?

もしくは

Where do you want to go?

が文法的に正しい形となります(Where do you want to go? だと country が消えてしまうので文脈上国の話をしていることが明らかでないと使えないですね。)。

そこで本題である Where are you from? を見てみましょう。I’m from the US. という肯定文を考えると疑問副詞 where が置き換えられるのは副詞句である from the US なので、

Where are you?

となってしまうのではないか?と私は考えたわけです。
もちろんそれでは意味が通らないので、文法的に成立させるのであれば

Which/What country are you from?

と言わなければならないと思ったのです。

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前置詞 from の特殊性

ここで注目するのが from の特殊性です。以下の文を見てみましょう。

My uncle visited Japan from abroad.

abroad は副詞であるために動詞や前置詞の目的語にはなれません(go to abroad はよくあるミスの1つですね。)。ただ上記の文章は文法的にも正しいとされ、他にもfrom here とは from under the desk のような from + 副詞(句) の形は時々見かけます。これが許されるのは from には副詞も目的語に取れるという特殊性があるのが原因です。

前置詞の目的語は名詞っていう基本的な原則にそんな簡単に例外を認めしまったら英文法として体系的なルールを考えようとしているのがアホらしくなるじゃん!と思わないでもないですが、そもそも英文法なんて例外だらけですよね。そもそも言語という生き物に無理矢理ルールを見出そうとするのが文法なので例外が沢山出てくるのは仕方がありません。

とは言え、そうなるとWhere are you from? も簡単に説明がつくわけですね。from は副詞も目的語に取れる、だから疑問副詞 where を目的語に取って from where と言える。と言うわけです。

疑問代名詞としての where

そうなるとここでまた別の問題が生じます。Where are yor from? から少し話はそれるのですが、以下の例文を見てみましょうか。

Where to, sir?(どちらへ、お客様?)

映画や小説のセリフでよく見かけるセリフですが、これは Where are you going to? を崩したカジュアルな言い方です。ではこの Where are you going to? が文法的に正しいとすると、to の目的語に where が来ているわけですよね。そうなると to にも副詞を目的語に取れるの?と考えてしまいます。ただ to にはそのような特殊性は無いようで、前述したとおり to abroad や to there など to+副詞の形は文法的に誤りです。実はto where が許容される原因は where の方にあるようです。

where は疑問副詞のほか、疑問代名詞としての用法がある。これが今回の疑問をすべて丸く収める回答ですね。疑問代名詞として使えるのであれば from where も to where も全て前置詞+名詞、つまり普通の用法であると言えるわけです。Where are you from? のことだけを考えるのであれば from が副詞を目的語に取れると考えても問題ないのですが、他の用例との整合性を考えるのであれば where を疑問代名詞と考えるのがベターかなと思います。

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まとめ

もちろんほとんどの場合で where は疑問副詞です。英語の先生に「where は疑問代名詞ですよね」なんて言ったら「この子はなんと文法を理解していないことだろう」と落ち込まれることと思います。あくまでも特定の用法でのみ現れる例外と思っておけば良いかと思います。

また、重要なことなのですが全ての表現を文法でロジカルに考える必要は全くありません。出身地を尋ねるときは Where are you from? と言うと理解しておくだけ十分だと思います。自由に英語を話すためには文法を完璧にしておかないといけないなどと言うことはありません。そもそも完璧にするなど限られたエキスパートの方だけができる話であり、いくら完璧にしたところで文法の例外などいくらでも出てきます。この記事の内容も、理解しておかなければいけない文法事項というよりも文法愛好家が書いた読み物と思っていただけると幸いです。

 

 

 

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