以前TOEICを受けた際、斜め前の受験者の方がリーディングセクションが始まった瞬間にものすごい勢いで連続マークをし始めたことがありました。およそ人間業とは思えない勢いでマークし続ける様子が気になりこっそり視線を送ってみると、その方がマークしているのはpart5ではなくpart7の最後でした。全く問題用紙を見ることなく20問ほど塗り終えるとその方は何事もなかったかのようにpart5から問題を解き始めました。これほど潔い塗り絵は初めて見ました。
さて、TOEIC受験者の誰もが経験するこの塗り絵体験について、そしてその原因となるリーディングセクションにおける時間の不足について私の意見を体験談とあわせて記載していきたいと思います。
ちなみにこの記事の本題からは少し逸れるのですが、時間節約のためにはマークシート用シャープペンシルの使用は必須かと思います。ほとんどの方は使っているかと思いますが、もしまだの方がいましたら今すぐご購入をオススメします。
ぺんてる マークシートシャープペン HB 消しゴム 替芯セット
私の塗り絵体験
塗り絵(ぬりえ)とは、輪郭だけ描かれた図形や模様の中に、色を塗りわけて楽しむ玩具(知育玩具)である。
引用:Wikipedia
などという意味ではなく、ご存じのとおりTOEICにおける「塗り絵」とは主に時間が足りなかった際にマークシートを適当に塗りつぶす惨めな行為のことを指します。自分は初めてTOEICを受けた際はTOEICが時間に厳しい試験だということを知らずに受験して30問以上塗り絵しました。それ以降2年以上にわたり10回以上塗り絵受験を続け、特にトリプルパッセージ(TP)に関しては1年以上問題文を読んだことすらありませんでした。その後特に塗り絵対策はしなかったのですが問題を沢山解くうちに自然とスピードは上がってゆき、初めて塗り絵をせず最後まで解き終えられた際にはスコアが900点を超えていました。

上記のグラフはTOEIC公式サイト(https://www.iibc-global.org/toeic/official_data.html)から引用したものです。X(旧Twitter)で他の方の様子を見ていると800点を超える方でも塗り絵をしている方は沢山いるようです。もし仮に800点が塗り絵の有無のおおよそのボーダーとするならば受験者全体の83%の方が塗り絵をしていることとなります。

目標スコアと塗り絵
時間制限無しで解いた場合と同程度の精度(正答率)でリーディングを時間内に解き終えるのは非常に難易度が高いと思います。自分は安定して900点を超えるようになった今でも「もっと時間があれば間違えなかったのに…」という問題が毎回必ず出てきます。もちろん満点を目指すような方であれば話は別ですが、500点~800点くらいの中級レベルを目指す方であれば、ある程度塗り絵をすることを前提に問題に取り組んでも良いのではないかと考えます。
以下、目標スコアごとに例を挙げて具体的に説明します。
目標スコア600点の場合
スコア600点の場合、内訳はリスニング320点、リーディングが280点くらいが平均だと思います。リーディング280点を取得するするためには素点で55問ほど正解すれば良いかと思います。特に時間がかかるであろうマルチパッセージ25問を抜いた75問を正解率7割で解いたとすると52~53問が正解できます。残り25問は塗り絵するとしても25%で正解するので5~6問は正解します。75分で75問を70%の正答率で解けば60問近い正答数でリーディングスコア300点が達成できます。
つまりスコア600点が目標の方はマルチパッセージの学習などする必要はありません。
目標スコア730点の場合
Bランクの入口となるスコア730点を目指す場合を考えてみます。スコア内訳をリスニング390点リーディング340点と仮定し、リーディングの素点68点を目指します。トリプルパッセージ15問を除いた85問を75%の正答率で解けば64問を正解、残り15問は塗り絵して25%の4問を正解して合計で素点68点が達成できます。
730点を目指す場合でもトリプルパッセージは捨てて大丈夫です。
「速く読む能力」と「正確に読む能力」
速く正確に文章を読めればベストですが、英語の学習過程ではこの2つの能力はトレードオフになっているケースが多いように思えます。自分が上記のような時間配分を推奨する理由は、「速く読む能力」より「正確に読む能力」の方が重要だと考えているからです。「速く読む能力」を重視して学習した場合「正確に読む能力」が犠牲になっている方を何人も見かけました。長期的な視点に立った場合、まずは「正確に読む能力」を十分に鍛えて正答率を上げ、その後に読む速度を上げたほうが効率的な場合も多いかと思います。
また、リーディングで時間がかかる要因の一つに「読み直し」があると思います。長文の問題を1回読んだだけでは理解できずに2回、3回と読み直すために時間がとられるというケースで、これはかなりの時間のロスに繋がると思います。「正確に読む能力」、つまり読解力が高ければこのような問題は発生しませんし、単に「正確に読む能力」がを上げるだけでも時間足りない問題は解消されていくと考えています。
「速く読む能力」を上げるには
とはいえ皆さんが真のTOEICerであればゆくゆくは900点以上を目指すことになると思います。そうなるといくら正確に読む能力が重要とは言え、やはり塗り絵は卒業しなければなりません。読むスピードを上げる必要はどうしても出てきます。
要求されるスピード
読む速さを表す目安には「WPM」という単位がよく使われます。これは「Words Per Minute」の略で、1分間にいくつの単語を読めるかという数値になります。TOEICでリーディングを時間内に解き終えるのに必要なWPMは諸説ありますが150~180と過去には言われていました。
ただ、TEX加藤先生が公式問題集9と10を元に計算したところ、近年のPart7はWPM150で読むと61分、WPM180で読むと51分で解き終えられるとのことです。Part7にかけられる時間を55分とした上でこのデータを信じるのであればWPM150では時間内に読み終えられず、WPM170~180程度は必要ということになりますね。
参考:TEX加藤『TOEIC L&R TEST 出る問題超特急 金の読解』(朝日新聞出版、2024年)
この記事とは全く関係ないですが金の読解はマジでおすすめなのでPart7苦手って方は是非実施してみてください。
出る問超特急 金の読解 単行本 – 2024/9/6 TEX加藤 (著)
WPMの測り方
これは簡単です。用意したスクリプトの単語数を数えてから時間を測って計算するだけですね。
例えば、200語のスクリプトを80秒で読んだとすると
200秒 × (60秒/80秒) = WPM150
となります。
とは言え語数を数えたり計算したりするのが手間という方もいるかと思うので、そういう方は速読系の教材を使ってみるのが良いかと思います。個人的にオススメなのは以下の教材で、どちらもWPM換算表がついているので簡単にWPM計測&速読練習ができます。
TOEIC L & R TEST 読解特急2 スピード強化編
TOEIC L&R TEST 読解特急5 ダブルパッセージ編
TOEICの教材に限らないのであれば以下もオススメです。
私が実践した方法
時間を測って解く、時間配分を意識して解くというのは時間に解き終えるための最もメジャーな練習方法だと思います。ですが、自分はは900点を超えるまで一度も時間を測って問題を解くことはしませんでした。文章を読むときは常に精読を行い、速く読むということは全く意識しませんでした。理由は2つあり、読む文章量を多くすれば自然とスピードが上がると考えたことと、速読することにより文章を雑に読むクセがつくのが怖かったことです。自分たちが日本語なら簡単に速く読めるように、精読と多読で自然と速度が上がると考えました。つまり読んで読んで読みまくるだけというのが自分の速読対策でした。

また、速読能力はTOEICでは確かに重要な能力ですが、試験以外で英語が必要な場面ではそこまで必要性が高いものとは思いませんでした。例えば海外のニュースを読みたいと思ったときに、「この英字新聞を限られた時間で読まない」などというケースはまずありえません。試験だけにとらわれずに「正確に読む能力」を向上させた方が様々なシチュエーションで英語を使えるし、また楽しめるのではないかと考えました。
その結果、自分の塗り絵の数は同レベルのスコア帯の方に比べてかなり多かったと思います(800点を超えてもかなりの数を塗り絵していました)。ただ、解いた問題の正答率は早い段階で高い水準を維持することができました。もちろんこののやり方がベストだとは思いませんが、速読トレーニングだけでスコアが伸び悩んでいる方がいましたら精読と多読に重点を置く勉強法も選択肢として検討する価値はあるのかなと思います。
まとめ
さて、偉そうに色々書きましたが皆さん自分に合った勉強をすればいいと思います(身も蓋もない結論)。もちろん速読能力を鍛えた方が速いスコアアップが見込める方も沢山いると思います。ただ、自分に関して言えば速読重視で学習するより精読重視で学習する方が自分に合っていたかなと思います。絶対に最後まで読み終わらないといけない!速読必須!と考えて伸び悩んでしまっている時は一旦読解の正確さを上げるアプローチを試してみてもいいかもしれませんね。