シンガポール人の友達のミンちゃん(仮称)と一緒にランチに行くために車で彼女を迎えに行きました。ミンちゃんのアパートの前まで来た僕はLINEで到着したことを伝えようと文章を考えます。「I arrived.」ってなんか違和感あるよなあ…。などと考えること1分。これ以上待たすのも申し訳なくて結局日本語で着いたことを伝えます。
ミンちゃんと合流した後に、「着いたよ」って英語でなんて言えばいいのかを聞いたみたところ、「私なら『I’ve reached』って言うかな」とのことでした。「reach」は発想に無かったですね。「I’ve arrived」はおかしい?と尋ねると、それも使えないことは無いとのことでした。でも一番の問題は完了形をきちんと使いこなせなかったことだと思いました。
日本人は完了形が嫌い
現在完了は日本人が最も苦手にしてる文法の1つだよとミンちゃんに伝えると、「え、そうなの!?」ととても驚いていました。彼女は当然ネイティブですから自然に使ってるわけですが、特に難しい文法だとも思っておらず、そこに苦手意識を持つこと自体が興味深かったようです。
その認識のズレは自分にとっても興味深かったです。英語教育者なら日本人は完了形が苦手だということは認識しているでしょうが、ミンちゃんは普通の(日本語が得意な)シンガポール人。 日本人でも普段喋ってる日本語のこういうところが難しい!(例えば動詞の活用ですかね。五段活用とか上一段活用とか日本語ネイティブじゃなかったら覚えるのは大変でしょうね)って感じることはあると思うのですが、 ネイティブスピーカーにとって現在完了は全然そういうものではないということですね。いやあ興味深い。
さて、日本人はどうして完了形が分からないのでしょうか。理由の1つには過去形と現在完了形の違いが分からないというものがあると思います。ミンちゃんに「I reached」と「I’ve reached」だと何が違うの?と尋ねると少し悩み始めました。あんまり考えたことなかったというような雰囲気。しばらく待つと「『I reached』だと着いた事実だけを伝えていることになると思う。『I’ve reached』だと今ここにいるよっていう意味だと思う」というような答えが返ってきました。
日本での現在完了の教育
「過去形は過去の一点だけを表す。現在完了形は過去から現在まで継続した状態を表す」
みたいな感じで教科書などで昔はよく見たような気がします。あくまで個人的な意見ですが、これだけの説明で理解できる人はあまりいないのではないでしょうか(もちろん自分も理解できませんし、今でも完全に理解できてないです)。さらには、「継続、経験、完了、結果の4つの用法があって…」などと続けられるともう聞く気も失せます。多分、僕の100倍頭の良い専門家の方々が徹底的に英語を分析した結果このような解説が生まれたのだと思うのですが、残念な事に100分の1の頭脳しか持たない僕には伝わりませんでした。
しかし時は流れて現在ではとても分かりやすい完了形の解説法が多数産み出されています。自分が「おぉ、これは!」と思ったものをちょっとだけ紹介したいと思います。それは、 日本語の過去形には英語の現在完了の意味を含む という考え方です。
例えば今回僕がミンちゃんにランチの誘いを断られていたとしましょう。
けちゅ「ミンちゃん、ランチ行かない?」
ミンちゃん「私、昼ご飯食べたよ」
これが日本語の授業で「私は昼ご飯を食べた」の文章だけを見て考えると、これは過去形の文章だろうなと考えそうです。でもこれが既に英語で言う完了形なんですよね。少し英語に詳しい方ならこれを英訳した時には「I ate lunch.」ではなく「I have eaten lunch.」と書くと思います。面白いことに日本語で言う過去形の文章には英語の現在完了形の意味が含まれているのですね。
「I reached.」と「I’ve reached.」 はどちらも日本語に訳すと「着いた!」になると思います。 でもニュアンスを含めて書き加えると違いが出てきます。
「I reached.」=「着いた!」
「I’ve reached.」 =「着いた!(だから今アパートの前にいるよ!)」
当然僕がミンちゃんに伝えたかったのは後者の方です。現在完了形が使われるのも納得です。
僕のように英語が未熟な日本人は得てしてまず日本語を考えてからそれを英訳しようと試みます。今回のケースもまず「着いた!」と伝えたいと日本語で考え始めたからこのようなことになったのでしょう。日本語を英語に訳すならこのような日本語と英語の感覚の違いをしっかり理解しておかないといけないですよね。
まとめ
もちろん自分がこれだけ書いたくれで読んでいる皆さんが完了形マスターになることはないでしょうし(そもそも僕自身が全く分かってない)、世間に出回っているたくさんの参考書やウェブサイトの中から自分に合った解説がされているものを是非探して欲しいなと思います。分かりやすいものならYouTube動画を1本見るだけでも大分感覚が変わるんじゃないかなと思います。
さて、自分にとって印象的だったのはネイティブのミンちゃんが現在完了が難しいと全く認識していなかったことす。完了形の表現はそれだけ自然なもので、かつとてもよく使うってことなんだと思います。そして日本人の英語学習者が躓くポイントは必ずしもネイティブスピーカーが難しいと思っているところではないということでしょうね。
日本語の感覚で英語の勉強をしていくと生じるズレ、それが完了形を難しくしている一因なのかなとお思います。こういう英語の感覚をもっと養っていきたいですね。