(あなたは1人でSpeakingの練習ができますか?)
自分がカナダの語学学校にいるときにこんな質問をクラスメート達に投げかけたことがあります。もちろん決して理論上不可能という話ではありません。1人でスピーチするとかぶつぶつ独り言を言ってみるとか方法は色々とあると思います。でもそれを習慣にして続けられるかというと難しいと思います。この時は自分を含めて全員がNOという結論に達しました。
つまりSpeakingの練習をするには相手が必要という話になるわけですが、それがSpeakingを練習する機会を減らしている要因になっていると思います。でももしアプリがその問題を解決してくれていつでもどこでもSpeakingの練習ができるということになればすごく理想的ですよね。
さて、長年英語学習を継続されている方であればELSAというアプリの名前を聞いたことがある方は多いと思います。非常に正確な音声認識機能を持つ発音矯正アプリとして日本だけでなく世界で使われていて、自分もELSA Proの永久会員として利用させていただいていました。
そんなELSAが9月に新プランであるELSA Premiumをリリースしました。これは従来の発音矯正に加えてELSA AIというAIとの英会話の練習ができる機能とSpeech Analyzerという自分のスピーチを分析できる機能の2つが新たに使い放題となる新プランです。今回はこのELSA Premiumのプランを試す機会をいただきましたので、自分なりの感想をまとめたいと思います。
まず結論から
自分がELSA Premiumを利用してみて感じたのは以下の2点です。
ELSAについて
ELSAは現在同名の会社のCEOであるVu Van氏によって2015年に開発され英語学習アプリです。Vu氏はベトナムからアメリカに留学した際に、自身の母語のアクセントが原因で英語がなかなか聞き取ってもらえないという体験をしたのが理由でこのELSAを開発しようと考えたとのことです。
なので本来は非常に精度の高い音声認識機能を持っていることを売りにした発音矯正アプリなのですが、今回はELSA Premiumプランで新たに無制限で利用できるようになった「ELSA AI」と「Speech Analyzer」の2つの機能について説明しようと思います。
ELSA AI
簡単に言うとAIが英会話の話し相手になってくれる機能ですね。自分も色々と試してみたのですがAIの受け答えの自然さには驚きました。
会話のロールプレイの種類には6種類の選択肢があるのですが、「My own scenario」を選ぶことでほとんどどんなシチュエーションでの会話も練習することができます。
もちろん会話の終了後には発音や文法のフィードバックが得られますので会話だけして終わりというわけではありません。ただ後述するSpeech Analyzerに比べればフィードバックはそこまで詳しくないかもしれません。また、自分が試してみた限りではスラングは使わなかったですし常にフルセンテンスで喋ろうとするという意味では実際の日常会話のようなリアルさは無いかもしれませんね。
Speech Analyzer
こちらは会話ではなく与えられたトピックに関してスピーチを行い、結果を分析・評価してくれるという機能になります。トピックはたくさんありますが現在選べるトピックはほとんどIELTSに関連しているものなので基本的には英語のSpeakingテストにおけるスピーチを想定しているのかなと思います。トピックはかなり多くのものが用意されていますのでIELTSに限らず英検等他の試験の対策にも活用できます。
スピーチのフィードバックは非常に詳細で、スピーチ全文を文字に起こして発音や文法のミスをすべて指摘してくれます他、流暢さ、イントネーション、語彙のレベルについても診断してくれます。
ただ、分析できるのは上記の項目のみで、スピーチの内容(例えば一貫性があるか、回答がトピックに沿ったものになっているか等)については評価されないようです。
人間の先生との比較
ELSA Premiumの口コミを見ると「人間の先生はもう必要ない」と言うような過激な意見も見かけました。確かに、現在英会話の指導者をつけずに独学しているような方にとっては有力な選択肢となることは間違いないと思いますが、個人的には人間の英語の先生とELSAでは強みが異なるので単純に常にどちらかが優れているというようなことはないと思います。以下に人間の先生のレッスンを受ける場合と比較して自分が感じたELSAのメリットとデメリットを説明します。
メリット① ミスの指摘が非常に正確
発音や文法のミスをとにかく正確に指摘できるというのはAIの最大のメリットかと思います。人間の先生が発音や文法のミスを的確に把握・指摘しようとするとかなりの技量を要すると思いますし、どんなに優れた先生であっても2分を超えるようなスピーチに含まれる全てのミスを記憶して指摘することは不可能だと思います。
逆に人間の先生であれば沢山あるミスの中でもその人が今取り組むべき一番重要だと思われるものに重点を置いて指導するなどの柔軟性があるとも言えますが、それでもミスの指摘に関してはAIが一番得意とする人間の先生と最も異なる部分だと思います。とにかく自分のミスを正確かつ詳細に指摘してほしいという場合はSpeech Analyzerが非常にオススメです。
メリット② 時間を問わずいつでも会話ができる
この記事の冒頭で問いかけたとおり1人で会話の練習をするというのは通常とても難しいです。とは言え人間の話し相手をいつでもどこでも確保できるなどという人はまずいないでしょう。なので「10分の隙間時間ができたのでELSAと話してみよう!」のように利用できるのはAIアプリならではの強みですね。隙間時間の有効活用という点でもAIの利用は非常に効果的だと思います。
デメリット① やりとりの自然さには限界がある
当たり前ですがどれだけ自然な会話ができると言っても人間との会話には及びません。人間の感情や思考をすべてトレースして返答をするというのはELSAに限らず現在のAI技術にはまだ難しいのではないでしょうか。
ただ自分はその辺は割り切って使っていますし、さほど大きなデメリットというわけではありません。英会話を楽しむのではなく練習が目的ということであれば十分すぎるほどの自然なやりとりが実現できていると思います。
ただELSA AIとの英会話ではおかしなことを言った際に聞き返してくれるのに対してSpeech Analyzerではどんなに支離滅裂なスピーチをしたとしてもそれが評価には反映されないというのは問題かもしれませんね。
デメリット② 英会話を楽しめるか
英会話の練習をしているということはこの先誰かと英語を話したいということだと思います。中には単にビジネスで使用できれば良いと割り切れる人もいるかもしれませんが、基本的には誰しも英語での会話を楽しみたいと考えると思います。それではAIとの英会話は楽しめるかと尋ねられたら、自分はかなり難しいと答えると思います。
自分はオンライン英会話やその他の英会話イベントへの参加を長く続けていて、当然その目的は英語を話せるようになりたいというのが第一ですが講師や他の英語学習者の方々と話すのももちろん楽しみにしています。ELSAでの英会話は練習なので英会話力さえ向上するのであれば楽しさは求めないという方もいると思いますが、自分としては他の方と話す楽しさというモチベーション抜きで英会話の練習を毎日続けるというのはなかなか厳しいと言わざるを得ません。
当然ELSAに限った話ではありませんが、この点はAIで英会話を勉強しようと思った際にどれだけ優れたAIを使っても無くすことができない人間の先生とのギャップなのではないかなと思います。
まとめ
ネガティブな意見もたくさん書かせていただきましたが、基本的にELSA Premiumで使い放題となるELSA AIとSpeech Analyzerは英会話を独学しようと思うのであれば非常に有力な選択肢であることに間違いはありません。
一方で、これがあれば人間の英語講師はもう不要となるというようなものでも決してありませんので、それぞれの長所と短所をきちんと把握した上で利用していただきたいなと思います。
今回の記事では取り上げませんでしたが従来からある発音矯正機能に関してはゲーム感覚で楽しく続けられるので人間の先生との競合が発生するようなものではないと思いますし、発音矯正アプリというフィールドではELSAの右に出るものはないと考えています。無料で使える機能も沢山ありますのでELSAを一度も試したことがないという方はとにかく一度やってみてほしいと思います。