自分がこれまで実施してきた英語学習のうちもっとも他の方にお勧めしたいのがAnkiです。ダントツでAnkiです。誰が何と言おうとAnkiです。文部科学省が推奨して義務教育に取り入れるべきと思っているくらいオススメです。Ankiを始めるまで自分は単語学習が非常に苦手だったのでAnkiを始める前は5,000語程度だった語彙数が今では20,000語を超えるレベルになりました。紙の単語帳で金のフレーズの1000単語を覚えるのに必死だった頃からは想像もできないくらい成長しました。もうAnkiは一生手放せません。
自分がこれだけ推しているAnkiですが、実際学習に利用している方はまだまだ少数派だと思いますし、名前は聞いたことがあるけど実際にどういうものかは分からないという人がほとんどかと思います。長年愛用している自分からしても、Ankiが流行らないのには明確な理由があると思います。
この記事ではAnkiの特徴とメリット、流行らない理由、そして興味がある方の導入手順について説明していきます。

Ankiとは何か
Anki(アンキ)は、後述する学習理論「分散学習(Spaced Repetition)」を自動化してくれる、暗記特化型のフラッシュカードアプリです。
元々はオープンソース(有志による開発)で生まれたツールで、Windows、Mac、iOS、Androidなどほぼ全てのデバイスに対応しており、学習データを同期して使えます。 世界中の言語学習者や、膨大な暗記が必要な医学生などに愛用されており、「いつ復習すれば忘れないか」というスケジュール管理を全てアプリがやってくれるのが最大の特徴です。
学習者はアプリの指示に従ってカードをめくるだけで、最も効率的なタイミングで記憶のメンテナンスを行うことができます。

Spaced Repetitionについて
Ankiを語る上で知っておきたいのがSpaced Repetitionという学習理論です。
「Spaced Repetition(スペースド・リピティション)」は、日本語で「分散学習」と呼ばれる学習法です。一夜漬けとは対照的に、復習の間隔を「1日後→3日後→1週間後」と徐々に広げていくのが最大の特徴です。
エビングハウスの忘却曲線というのは聞いたことがある方も多いと思いますが、これに基づいて脳が忘れかけたギリギリのタイミングで復習を行うのが最も記憶に定着しやすいという性質を利用した学習方法になります。あえて時間を空けて「あれ、なんだっけ?」と思い出す負荷をかけることで、少ない復習回数でも効率よく、一生忘れない「長期記憶」を作ることができるというものですね。
このSpaced Repetitionを効果的に実施できるのがAnkiになります。実際にAnkiは世界各国の学習者が利用しており、TEDで言語学習をトピックにしている複数のスピーカーがSpaced Repetitionの重要性を話しAnkiの名前を出しております。例えば以下のような動画です。
Ankiを用いたSpaced Repetitionの仕組み
これまで紹介した通りAnkiはフラッシュカードアプリの一種になります。学生時代はリングカードを使って英単語を覚えたという方も多いと思いますが、それがアプリになったイメージですね。
以下は自分が作ったAnkiデッキの画面です。

表面で文字と音を聞いてadvocateという単語の意味を思い出し、裏面で確認するという流れで進んでいきます。ポイントは裏面の最下段にある「もう一度」「難しい」などの選択ボタンで、この単語が自分にとってどの程度の定着度であるかを4択で選択します。これは、例えば「正解」を選択すると3日後にこのカードが再度出題されるということです。「正解」や「簡単」を選択し続けると出題間隔が1週間後、2週間後、1か月後などのようにどんどん長くなっている一方で、意味が思い出せず「もう一度」を選んでいるうちはとにかく毎日出てくるという仕組みです。この仕組みがAnkiでSpaced Repetitionを行うための核となります。
通常の単語帳でSpaced Repetitionが難しい理由
例えば紙の単語帳で英単語を覚えようとした場合、とにかく何周も回すという学習方法が主流になるかと思います。これには当然一定の効果があることは間違いありませんが、Spaced Repetitionの視点で見ると適切な復習感覚が測れないのが難点です。
また、英単語学習を頑張ったことがある方は分かると思うのですが、覚えやすい単語と覚えにくい単語の差は大きく単語ごとの定着にはかなりバラつきが出てきます。ですのでシンプルに単語帳全部を周回する学習方法では既に覚えている単語も何回も学習することとなり時間と労力のロスが大きくなってしまいます。
そうなると分からない単語に付箋を貼って必要なものだけを学習するという方法だと学習リソースのロスは少ないと言えます。ただ、これで覚えた単語の付箋をどんどん剝がしていった時に、付箋を剥がした単語もいずれ忘れて復習が必要になるという点には要注意です。この辺りはアプリで管理する方が絶対的なアドバンテージがあります。
カスタマイズ性
効率良くSpaced Repetitionを実施できることに加えてもう1つAnkiの優れた点がカスタマイズ性です。
フラッシュカードアプリは他にも沢山ありますが、簡素なものであれば表面に英単語、裏面に意味といったものでしょう。少し豪華なものであれば音声や例文まで載ってくるかもしれません。一方Ankiはこのカードを自由自在にデザインできるので、自分の好きなものを好きなように載せることができます。先ほどの私が作ったAnkiのデッキでは裏面には品詞・意味・例文・例文訳・例文音声・類義語・対義語・Google image検索や各種web辞書へのリンクボタンなどを載せてあります。これらは基本的なHTMLとCSSが分かれば簡単に追加できるものであり、知識がある方はもっと高度なデッキを作ることができます。
Spaced Repetitionを取り入れたフラッシュカードアプリは他にもありますが、カードのカスタマイズ性でAnkiの右に出るものはありません。多分。
Ankiが流行らない理由
と、ここまでべた褒めしておいて恐縮なのですが、冒頭にも書いた通りAnkiには3点明確に流行らない理由があると思っています。
デッキ作成が難しい
Anki自体はフラッシュカードアプリであり、特定の英単語帳が入っているというものではありません。つまり覚えたい英単語(帳)を自分で入力してデッキと呼ばれる学習セットを作成しなければいけません。ネットを見ていると究極の英単語(SVL)やパス単をAnkiを使って覚えたという方を多く見かけると思いますが、それらのデッキを作成しないことには学習が始められません。単語を1つずつ入力している方もいますが、1000単語以上入力しようと思ったら膨大な時間がかかりますし、例文まで入力するのはほぼ不可能です。多くの方がAnkiを試したにも関わらず表面に英単語、裏面に意味だけ、というようなシンプルなものしか作れず効果を感じられず止めてしまっているのは非常に残念ですね。
もちろん個別に入力せず一括でデータを作成する方法もありますが、少しITリテラシーが必要な作業となるため、誰でもできるものかと言われると少し難しいと言わざるを得ません。最近ではYouTubeに解説動画等も沢山出ていますが、デッキ作成のハードルの高さこそがAnkiが普及しない最大の理由と言って間違いありません。
iOSアプリが高い
AnkiはPC版アプリはWindows版・Mac版ともに無料です。ただ、単語学習は隙間時間を見つけてコツコツ進めていける手軽さが必須であり、いちいちPCを起動して単語学習するとなるとほとんどの人がやらなくなると思います。ですのでスマホアプリ版の導入が必須なのですが、iOS版が買い切りとは言え4,000円とべらぼうに高いのです。ほとんどの単語帳や単語アプリが1,000円~2,000円で購入できる中で、中身すらなく自分で単語を入力しないといけないアプリに4,000円払おうとする人がどれだけいるでしょうか。Ankiの良さが分かっている人でなければなかなか出せる金額ではありません。
私がカナダに留学していた頃、語学学校のクラスメートから「けちゅはどうやってそんなに沢山単語を覚えたんだ?」という質問を数えきれないほど尋ねられました。日本人だけじゃなくて世界中の留学生から尋ねられましたが、そのほとんどが4,000円(またはそれ相当の金額)ほどかかると言った時点で諦めていました。
ちなみにAndroid版のアプリは無料なので使わない理由はありません。
Ankiを使ったとしても単語学習はやはり大変
Ankiさえ導入すれば魔法のように単語を覚えられるかというとそういう訳でもありません。単語学習の効果を最大化してくれるものの、努力が不要になるということではありません。Ankiの学習自体は特段楽しいものではありませんし、そういう意味ではモチタンなど楽しく学習ができるアプリの方が続けやすいという方は一定数いるかと思います。
話はまた留学時代に戻るのですが、自分の薦めでAnkiを導入した方(デッキ作成も含めて全部自分がサポートした方)でもAnkiをきちんと継続できる人は少なかったです。Ankiを信じて長期間コツコツ地道に頑張れる方のみが効果を実感できるのだと思います。
また、長期記憶化の最大効率を目指したアプリなので週末の定期テストに向けて単語を詰め込む必要がある等の短期記憶の学習には向かずすぐに効果を感じにくいのも原因かと思います。
デッキの準備方法
これまで書いたようにAnkiの学習のためにはデッキと呼ばれる学習セットの準備が必要となりますが、結局のところこれをどのように準備するかどうかが最大の課題です。上記で書いたように手入力は時間がかかり過ぎるのでそれ以外の方法を紹介します。
共有デッキをダウンロードする
Ankiには共有デッキと呼ばれる世界中のどこかの誰かが作って公開しているデッキを自由にダウンロードできる機能があります。ここで公開されているデッキで合うものがあればそれを使うというのは手っ取り早い手段の1つだと思います。
ただ、どんな方向け(目的やレベルなど)のデッキかも分からないで使うのは少しリスキーなので可能であればTOEIC向けとか英検向けとか、自分が良く知っている単語帳のデッキを使った方が学習効果は高いと思います。また、この共有デッキにはDUO3.0や金のフレーズなど日本の有名単語帳のデッキも存在しますが、これらは明らかに著作権侵害ですので絶対に利用してはいけません。
正直なところ共有デッキでオススメなものは見つけられずあまり推奨できる方法ではありません。
CSV作成で一括取り込み
Googleスプレッドシート等でCSVデータを作成して一括でAnkiに取り込む方法です。要は自分でデッキを作るということです。
従来ではCSVデータの作成とカードレイアウトの作成がそこそこ大変だったのですが、現在はChatGPT等の生成AIの登場で劇的に作業のハードルが下がりました。私が作成した英検準1級用のAnkiデッキも全てAIを利用して作成しております。PC作業に少し自信がある方でしたらYouTube等でやり方を調べて実施するのがお勧めです。
有識者に相談する
自分で単語帳を作ろうと思うと多かれ少なかれ手間が発生しますので、結局そのあたりを誰かにお願いするのが一番早いです。特に市販の単語帳をAnkiデッキ化したいと思ったときは作業がさらにテクニカルになってくるので一個人が再現しようとするのはかなり厳しいと思います。ココナラやSNS等でAnkiデッキの作成相談or代行をしている方は簡単に見つかるかと思いますし、ご連絡をいただければ私もある程度相談には乗れるかと思います。
サンプルデッキ無料配布
デッキ作成は難しそうだけどAnkiは一度使ってみたい!という方のために英検2級レベルの単語を500個を集めてサンプルデッキを作成してみました。サンプルとは言え発音記号、例文、音声、類義語など基本的なものは全て揃ったデッキですので、完全手入力のデッキに比べるとずっとクオリティは高いと思います。内容は全て私のオリジナルなので著作権等の問題もありません。下記の私のnoteから無料でダウンロードできますので一度使ってみてください。この記事内で画像を付けて紹介しているものです。
サンプルAnkiデッキ無料配布(英検2級レベル500単語&英検準1級レベル名詞100単語)
こちらは反響があればもっと沢山作ろうかなと思うので、気に入った方はnoteやXで騒いでくれると嬉しいです。

私のAnki歴
あまり興味がないかもしれないですが最後に少し自分のAnki記録を紹介いたします。
2026年1月時点でAnkiを使い始めて6年ほどになります。途中お休みしていた期間もありますが、基本的には実施している日の方が多いです。

主に市販の単語帳をAnkiを使って学習するということが多く、主なものは以下です。
何をやれば良いか迷っている方はとりあえず究極の英単語(SLV)を完走すればリアルで自分より英単語に詳しい人に会うことはほぼ無くなるでしょう。自分は留学前にSVLを覚えていっただけで語学学校でwalking dictionaryと呼ばれました。当時の語彙数は15,000語弱程度でした。

語彙数は以下のサイトで測れます。今後もAnkiを継続して学習して年間3,000語ほど語彙数を増やしていきたいと思っています。なお、自分が初めてTOEIC950点を超えた時(Anki導入前)はたったの5,000語でした…。
https://preply.com/en/learn/english/test-your-vocab
まとめ
とにかくAnkiはすべての方にお勧めなので一旦全て方に試していただきたいと思っています。試した上で合う合わないはあると思いますが、試さずに放っておくのはもったいなさすぎるアプリです。Anki導入のハードルを下げるために今回サンプルデッキも作成したので、是非騙されたと思って一度試してみましょう。
